表面利回りと実質利回りの違い|差が示す意味と各役割・活用法
本記事では、「表面(グロス)利回りと実質(ネット)利回りの違いは何?」「両者に差が出るのはなぜ?」「投資判断においてはどちらを活用すればいいの?」という疑問を持つ方に向けて、
表面利回りと実質利回りの違いを、実務における投資判断の視点も交えながらやさしく解説します。
Contents
表面利回りと実質利回りの違い
まず表面利回りと実質利回りの違いを簡単に表現するならば、
売上ベースの利回りか、利益ベースの利回りかの違いといえます。
つまり、賃貸収入等のインカムゲインを売上(グロス)で見るか、そこから費用を控除した利益(ネット)で見るかという違いを反映しているのです。
例えば、テナントからオーナーに家賃が振り込まれても、全額がオーナーの手残りとなるわけではありません。
実際にオーナーの手元に残るのは、家賃収入から管理費・修繕費・税金などの各費用を差し引いた金額になります。
なお、ここでいう費用とは、厳密に言えば主に不動産の運営にかかる固定費を指しています。
両者の差が意味するものは"経費"
ここから、表面利回りと実質利回りの差が意味しているのは"経費"であることが分かります。
具体的な例を示すと、
【物件A】表面利回り:5%、実質利回り:4%
この時、両者の差である1%は、売上から控除されている経費に相当します。
そのため両者の差が大きければ大きいほど、売上に対して多くの経費がかかっていることを読み取ることができます。
しかし、このままでは具体的なイメージが湧かない方が多いでしょう。
そこで、売上に対する経費率に換算して考える場合、
「表面利回り5%に対してN%の経費率がかかると実質利回り4%になっている」と言い換えられます。
経費率の計算|表面利回りと実質利回りの架け橋

さて、両者の差が経費を意味することから、実際に表面利回りと実質利回りから経費率を計算することができます。
経費率(%)=1-(4%/5%)=20%
つまり、表面利回り(売上ベース)に対して20%の経費がかかっており、
結果として実質利回り(利益ベース)は、
表面利回り5%×(1-経費率20%)=実質利回り4%
もちろん「経費率が20%=売上に対する利益率が80%」と解釈しても同様です。
このようにすれば、2つの利回りが経費によって結びついていることが体感できるでしょう。
表面利回りと実質利回りの詳しい計算手順については下記記事をご参照ください。
まとめ:【公式】表面利回りから実質利回りを計算できる!
表面利回りと実質利回りの関係を公式で表します。
表面利回り×(1-経費率)=実質利回り
なお、実務上は、表面利回りしかわからない場合に、経費率を仮置き・想定することで実質利回りを概算するときに使うことが多いです。
表面利回りと実質利回りのどちらを見るべきか?プロは?

表面利回りと実質利回りの差が経費から生じることを解説しましたが、
実際の投資判断においてはどちらの利回りを用いれば良いのでしょうか?
先に結論だけをいえば、どちらの利回りも等しく考慮するというのが回答になります。
しかしながら、あくまで一般的な傾向として、個人向けの売買では表面利回りが重視され、不動産業者を含めた法人向けの売買では実質利回りが重視されることが多いです。
そこで、投資判断における表面利回りと実質利回りの役割の違いから、それぞれの活用法までを以下で解説します。
表面利回り:不動産の収益力の指標で客観度が高い
表面利回りは、不動産から得られる収入(主に賃貸収入)総額に着目した指標です。
つまり、ある不動産の純粋な収益力、稼ぐ力を意味しており、
経費金額・項目などの投資家によって生じる差異がない点でより客観的であると言えます。
表面利回りは実質利回りと異なり経費率の影響を受けないため、誰が計算しても同じ値になります。
端的にいえば、「この物件はいくら稼ぐのか」を表しているのが表面利回りと言えるでしょう。
投資判断における活用法としては、まずは表面利回りを計算して相場と乖離していないか確認することが大切です。
また、表面利回りと専有面積を用いれば入居賃料を逆算できるため、物件の賃料相場に違和感がないかを間接的に知ることができます。
※表面利回りと専有面積から入居賃料を逆算する方法は別記事にてご紹介予定です。
実質利回り:不動産プレイヤーの共通言語で投資家目線

不動産取引の実務(とりわけ不動産業者間)においては実質利回りを重視することが多いのも事実です。
字義の通りですが、実質利回りとは、投資家が投資期間中に享受できる純収入のことです。
表面利回りから控除する経費は固定費であるため、不動産を運営する以上は必ず発生する費用です。
つまり、仮に表面利回りが何%であっても、投資家にとっての手残りは常に固定費を控除した収入にならざるを得ないということです。
経費率を考慮する実質利回りでは、不動産の経営状況により経費率が増減するため、各投資家によって変動する指標であるといえます。
一例として、自主管理のため建物管理費を抑えられる場合は、経費率も低く抑えることができます。
そうした点で「投資家はいくら稼ぐのか」を表しているのが実質利回りと言えるでしょう。
実際、REITなどで用いられるキャップレートは投資家が求める実質利回りです。
これはまさしく、投資家サイドから見たある物件に期待する投資利回りのことです。
※キャップレートを用いれば、実質利回りから不動産価格を算出できます。
結論:二つの利回りのバランスを考慮する
「投資判断においては表面利回りと実質利回りのどちらを考慮すべきか?」
結論としては、先に述べた通り、どちらの利回りも考慮することが大切です。
ただ、繰り返しにはなりますが、これは「どちらか一方の利回りしか判断材料としない」ということではなく、
2つの利回りのバランスを見て総合的に判断をする必要があるということです。
- 表面利回りが相場から乖離していれば、そもそも投資可能な物件か否か判断できる
- 表面利回りと実質利回りの差が大きければ、経費が過大であることがわかる
それぞれの利回りの役割の違いをイメージしなから、ぜひ場面に応じた判断材料としてください。

