不動産業者が必ずしも満室稼働=優良物件とは考えない理由

不動産投資にあたって、「満室稼働」「高稼働」=優良物件という考え方には馴染みがあるかもしれません。

しかしながら、不動産売買を生業とする不動産業者にとっては必ずしもそうとは言えません。

本記事では、不動産業者が「満室稼働」物件を欲しがらない理由を解説するとともに、

反対に、どうした条件下では「満室稼働」「高稼働」物件を評価できるかについても不動産業者の目線から解説します。

結論:「満室稼働」「高稼働」では"アップサイド"がない

下り坂のイメージ

結論を先に言うならば、不動産業者にとって稼働状況の良い物件とは"手の加えようがない物件"です。

空室がなければリノベーションや適正賃料への改定を行うことができず、付加価値を加える余地が減少します。

将来的な不動産価値の向上が見込めない=アップサイドがない場合では、事業としての収益源を作ることが難しくなるのです。

不動産販売事業のビジネスモデル

なぜアップサイドが重要かについては、不動産販売事業のビジネスモデルから理解することができます。

一般に不動産販売事業においては、相場との乖離を活かした売買や、リノベーションなどで付加価値をつけての再販を行なっています。

ここで重要なのは、多くの不動産業者が満室稼働や高稼働によって得られる賃貸収入(インカムゲイン)よりも、

購入時と売却時の売買金額の差から生じる売買差益(キャピタルゲイン)を主な収益源としていることです。

キャピタルゲイン=アップサイド×収益還元法

やや専門的になりますが、キャピタルゲインは主に不動産価値の向上から生じています。

大規模修繕の実施や専有部のリノベーション工事を行ない、物件の収益性を高めることで不動産価格は上昇します。

つまり、不動産のポテンシャル(アップサイド)を加味しながら、収益還元法で不動産価値を再評価することでキャピタルゲインが獲得可能になるのです。

収益性の改善が不動産価格へ与える影響や収益還元法の仕組みについては、下記の記事で解説しています。

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不動産業者が「満室稼働」でも欲しがる物件とは?

さて、これまで不動産業者が物件の価値向上によってキャピタルゲインを創出していることを解説しました。

逆の見方をしてみれば、満室稼働であったとしても将来的なポテンシャルやアップサイドがあれば投資対象になります。

続いては、満室稼働でも不動産業者の投資判断が変わる基準を具体的に解説します。

Ⅰ. 専有単価が安い

専有単価が周辺相場と比較して安い場合は、「満室稼働」であることにかかわらず投資対象となる場合があります。

なぜならば、専有単価の乖離を利用した売買が可能だからです。

例えば、

「利回り基準で値付けされているが専有単価では割安のオーナーチェンジ物件を購入し、

退去発生時にリノベーションを施してから、専有単価を基準に実需狙いで売却する」といった投資手法も存在します。

このように専有単価が割安であれば、適正相場での売却を想定することでリターンが生まれる可能性があります。

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Ⅱ. 賃料坪単価が安い

続いては、満室稼働でも現在の賃料坪単価が安い場合です。

もし現在の賃料が安ければ、将来的には収益性の改善を期待することができます。

この場合、中長期保有によって適正賃料でのリテナントを行えば、時間とともに利回りが上昇します。

また実は「専有単価が安い」ことは「現在の賃料坪単価が安い」ことを示唆している可能性も高いのです。

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Ⅲ. 退去予定箇所が多い(定期借家契約、回転率が高いetc.)

最後にご紹介するのは、現在の稼働率は良いが、退去予定箇所が多い物件です。

例えば、オフィスビルにおいて定期借家契約が締結されている場合、期限満了とともに解約・退去が発生する場合があります。

そうした際には、空室部分のセットアップオフィス化などで収益性を高めることが可能です。

また、中長期保有によって全空となる物件などは、将来的な開発素地として評価・活用できる場合があります。

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満室稼働物件のメリット

これまで不動産業者が満室稼働でも投資対象とする条件について解説してきました。

しかしながら、上記の投資手法がプロならではの資金力やノウハウを必要することには留意が必要です。

実際には、「すでに付加価値がついた満室稼働物件に投資をしたい」と考える方も多くいらっしゃるでしょう。

そこで、最後に満室稼働物件のメリットについてご紹介します。

リーシングの負担が少ない

満室稼働物件のメリットとしては、リーシング(賃貸募集)の手間や負担が少ないことが挙げられます。

とりわけ不動産業者がすでにリノベーションや適正賃料でのリーシングをおこなっている場合は、新たに査定や条件設定をする必要がありません。

もちろん退去発生時には賃貸募集の必要が生じますが、実績があれば同条件ですぐにリーシングを開始できます。

また、適正賃料で稼働している場合、"本来得られたはずの賃料を享受できない"という機会損失を回避できます。

キャッシュフローが回る

すでに適正賃料で賃貸できている場合は、安定したキャッシュフローを享受することができます。

とりわけ中長期保有によるインカムゲイン獲得を目的とするコア型の投資手法においては、空室率を抑えることが重要です。

反対に、空室率があまりに高い場合では、保有期間中のキャッシュフローが減ることはもちろんですが、売却の際に賃料設定のミスやそもそもの賃貸需要がないとみなされ影響が生じる可能性があります。

まとめ

多くの不動産プレイヤーは、不動産のポテンシャルを最大限に発揮することでキャピタルゲインの獲得を目指します。

それが、不動産業者が「高稼働」や「満室稼働」物件を必ずしも評価しない理由です。

一方で、付加価値を与えられる可能性=アップサイドのある物件についてはこの限りではありません。

不動産の収益性を高めることで賃貸収入が上がり、資産価値が上昇するからです。

資金やノウハウを駆使してキャピタルゲインを狙うのか、安定したインカムゲインを追求するのかは投資スタイルによるところでしょう。

結局のところ、物件の稼働状況に関わらず、各々の資金力やリスク選好にあった投資戦略が最適なのかもしれません。

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