収益不動産の価値を高めるバリューアップ手法6選|プロが実践する定番戦略を解説

収益不動産の価値を高めてより高値で売却する戦略は、リノベ転売業者からバリューアッドファンドまでの幅広いプレイヤーが採用する一般的な手法です。

本記事では「不動産の収益性を上げたい」「より高く売れる方法が知りたい」「プロのバリューアップ方法が知りたい」といった方に向けて、不動産事業者が収益不動産の価値を高める(バリューアップ、バリューアッド)手法を解説します。

バリューアップとは

まず、収益不動産におけるバリューアップが何を意味するのかについて簡単に説明します。

バリューアップとは、ある不動産の課題解決や収益性の向上を通じてその価値を高めることです。

そして、その価値向上の程度は利回りや価格に反映されるため、おおむね不動産価格の上昇分をバリューアップの尺度として知ることができます。

そのため狭義には不動産価値を高めること≒不動産価格を上げることと定義できるでしょう。

不動産価値や収益性を高めることで、所有者は下記のメリットが得られます。

①運用・保有中により多くのインカムゲインを得る

②運用終了時には購入価格よりも高値で売却することでより多くのキャピタルゲインを得る

このようにして、バリューアップは不動産事業者にとっての大きな利益の源泉となっているのです。

バリューアップの原理:シンプルな収益不動産の価格決定論

バリューアップの原理を理解するためには、収益不動産の価格決定がどのようにされているのかを知ることが有効です。

収益不動産の価格決定は極めてシンプルな原則で成り立っています。

価格=年間収入÷期待利回り(キャップレート)です。

期待利回りが低いほど不動産価格は高くなりますが、これらは物件の立地や築年などから市場相場が形成されるため、ある事業者や個人が意図的に期待利回りを下げることは困難です。

不動産のキャップレート(期待利回り)とは?なぜ低いほど価格は高くなるのか

本記事では「キャップレートとは何か」「なぜ低いほど価格は高くなるのか」について、不動産事業者・プロ目線でイメージがしやすいように解説します。 キャップレート(期…

もちろん、付加価値により物件個別の魅力度を高めるなどして、市場での相場よりも低いキャップレートでの売却を狙うことは可能です。

しかしここで重要なのは、キャップレートは収入よりもコントロールが難しい変数であることです。

収益性の改善が不動産価格に与えるインパクトは絶大

もしキャップレートを動かすことが難しい(定数)ならば、不動産価格を上げるためには収入を上げるほかありません。

そして、収益還元法においては、収益性の改善は不動産価格に非常に大きな影響を与えます。

例えば、ある不動産のキャップレートが5%で、月額収入が5万円増えた場合を考えます。

この場合、収入増にともなう不動産価値の上昇分は下記の通りです。

60万円/年(5万円×12ヶ月)÷5%=1,200万円

つまり、年額60万円の収入増が、1,200万円もの不動産価値向上に寄与することになるのです。

こうしてバリューアップの多くの手法は、必然的に収益性の改善という方向性で行われることになるのです。

不動産事業者の定番バリューアップ手法6選!

Ⅰ. リノベーション

バリューアップの最も王道でイメージしやすい手法といえば、リノベーションが挙げられます。

内容としては、大規模修繕やエントランス・共用部の改修・意匠工事から専有部のリノベーションまでが含まれます。

バリューアップという観点において重要なのは、リノベーションの費用対効果(ROI)を常に考慮する必要があることです。

リノベーション費用に対して賃料や不動産価格の伸びしろが小さい場合、その投資効果は限定的となってしまいます。

例えば、同一の部屋に対して下記の2パターンを想定します。

①3点ユニットを独立洗面台&シャワーブースにする等の軽微なリノベーション(低コスト)

②設備の更新や壁紙・フローリング張替えを含めたフルリノベーション(高コスト)

もし両者で収益性の改善に大差がない場合は、②では過剰投資となりコスト負けとなる可能性が高くなります。

特に専有面積の小さい1R・1Kなどの単身者向け住戸は、リノベーションによって大幅な賃料上昇を狙うのが難しい点には留意が必要です。

収益不動産においては、賃料の上昇余地が大きくなりやすいファミリータイプの住戸をリノベーションする方が総収入が増えやすいため、結果としてバリューアップの効果も相対的に高くなる傾向があります。

リノベーションを実施する際には、コストに対して見込める賃料増、また結果として期待される不動産価格の上昇を定量的に検証し、ROIに基づいた判断を行うことが不可欠です。

Ⅱ. セットアップオフィス

セットアップオフィスのイメージ

住宅で一般的なリノベーションに対して、オフィスではセットアップオフィスへの改装が行われます。

セットアップオフィスとは、ベンチャー企業やスタートアップなどをメインターゲットとして、あらかじめ内装・設備や什器、会議室が設置された状態(=セットアップ)で賃貸されるオフィスです。

テナントにとっては、小さくても好立地の物件に入居できる、内装工事や設備投資をする必要がないので初期費用が抑えられる、また事業や人員が拡大してオフィスが手狭になってもすぐに移転できることがメリットです。

こうした利便性や設備投資負担の軽減といった価値の対価として、通常の賃貸マーケットよりも高い相場が成立しているのです。

注意点としては、賃料単価が相場より高くなる反面、空室リスクや各種コストを織り込む必要があるため、投資家の期待利回りが相対的に高くなること、また専有単価が割高になることが挙げられます。

不動産の専有単価とは?基本からプロだけが読み解く意味まで解説!

不動産価値の算定においては、様々な指標を用いて価格を決定します。 中でも不動産業者が売買において一番に注目するのは、"利回りと専有単価"と言っても過言ではありませ…

Ⅲ. 増賃(リースアップ)

相場より大きく乖離した安い賃料で入居しているテナントに対しては、交渉によって相場賃料を上限とした賃料の引き上げを行います。

事業者から見た場合、増賃交渉はリノベーションと異なって費用が発生しないため、収益性の改善においてはもっとも費用対効果の高い手段といえるでしょう。

とはいえ、割安な賃料水準から通常の賃貸相場への引き上げでしかないため、付加価値の創造というよりは物件ポテンシャルの発揮という側面が大きいかもしれません。

一方で、テナントから見た場合は毎月の賃料負担が増えることになるため、増賃交渉に見合う付加価値や根拠の提示が求められるでしょう。

そのため、増賃交渉の成功率を上げるには、単に相場賃料の提示をするだけでなく、共用部のリノベーション等による付加価値・利便性の向上をテナントに実感してもらうのが近道といえるでしょう。

Ⅳ. 民泊、サービスアパートメント(オペレーショナルアセット化)

オフィスがセットアップオフィス化されるとすれば、共同住宅においては民泊・サービスアパートメント運営による収益性の向上が図られます。

民泊とサービスアパートメントの間には根拠法や各種規制による違いが存在しますが、通常の住宅としての用途ではなく、宿泊系アセットとして高単価で運用する点では同様のバリューアップ手法と言えます。

あくまで一般的な傾向ですが、一定の宿泊需要が見込める立地に位置する不動産の場合、住宅用として賃貸する場合よりも宿泊用アセットとして運用する場合の方が収益性が高いことが多いためです。

運営実務においては自社でオペレーションを行うことも可能ですが、実際には運営ノウハウを持つ特定のオペレーターとML契約(マスターリース)・MC契約(マスターコンセッション)等を締結して運営を委託するケースが多いです。

ML契約の場合、オーナーはテナントとなるオペレーターに建物を一棟貸しする形態となり、管理・運営の実務にほとんど関与することなく、契約時にあらかじめ定められた賃料(固定賃)を受け取ることが可能です。

一方で、MC契約を採用する場合は、オーナーとオペレーターは"賃貸借関係"というよりは"事業パートナーに近い関係"となるため、売上に応じた変動収入を受け取る事業型のスキームとなります。

どちらの場合でもオペレーターが独自に内装工事や家具の設置などを行い、集客から運営までを一貫して担う点は同様です。

収益物件としての安定性を重視するなら固定賃料型のML最大限の収益を追求するなら事業型のMCというように、リスクとリターンのバランスを踏まえた戦略的な選択が求められます。

Ⅴ. コンセプト特化型マンション

特定の顧客層に向けて、何らかのコンセプトをもとに特別な仕様や設備を備えたマンションがコンセプト特化型マンションです。

例えば、楽器演奏に特化した防音マンションや、ゲーマー向きのゲーミングマンション、ペット好きのためのペット共生マンション、スマホとIT家電・設備の連携が可能なIoTマンションなど様々な企画が存在しています。

賃貸ニーズ全体としてのパイは小さくなるものの、特定のニッチな強い需要に対応するため、通常賃貸時よりも高額な賃料を狙うことが可能です。

不動産事業者としては、コンセプトの立案から設計・施工に至るまでの企画力や、ニッチ需要を的確に捉えるマーケティング力が求められる反面、発想力次第で大きな差別化ができる手法といえるでしょう。

【外部リンク】

・楽器演奏に特化した防音マンション、ゲーミングマンション:MUSISION(株式会社リブランマインド)

・ペット共生マンション:コンフォリア・リヴ(東急不動産株式会社)

Ⅵ. 空きスペースの有効活用・収益化(付帯設備の設置・導入)

バリューアップ手法の最後は、小さくても決して侮ってはいけない空きスペースの有効活用・収益化です。

前述したとおり、月額数千円から数万円程度の収益化でも、不動産価値に与えるインパクトはとても大きいです。

空きスペースの有効活用・収益化の例としては下記のような方法が挙げられます。

  • 外壁を広告スペースとして活用し、看板やポスター、デジタルサイネージ等の広告物を掲載する
  • 屋上を活用して太陽光発電設備や携帯電話基地局を設置する
  • エントランスや前面道路に自動販売機を設置する
  • バイク置き場やその他空いたスペースにシェアサイクルや電動キックボードのポートを設置する 

なお、こうした付帯設備の設置・導入を行う際は、法律や条例による規制がないか、また構造上・安全上の問題がないかを事前に必ず確認するようにしましょう。

まとめ:テナントへの価値提供がバリューアップの源泉

本記事では、収益性の改善がバリューアップの源泉であることや、その具体的な手法について解説しました。

ここで私たちが忘れていけないことは、その収益の源泉とは"実際に不動産を利用するテナントが払う対価であること”です。

ご紹介した数々のバリューアップ手法は、テナントに付加価値を提供することでより高い対価を得ることです。

それこそが社会的意義と利益追求を両立させる本質的な意味でのバリューアップといえるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です